2018年 印象的だった音楽

takaoka on Twitter: "音楽の年間ベスト、シーンの全体像よりも、書き手が本当に好きなものが知りたい"

昨年は環境がガラッと変わって結果的に音楽どころではなかった、ということもあって、今年は意識的に音楽に触れるようにしていました。

Apple Musicはめちゃくちゃ便利で、気になったものや話題のものはすぐに聴けます。さらに東京はライブハウスやCDショップも無数にあるので、気になった人がいるとすぐに観に行けます。最高です。音楽聴きまくっても死なないのってヤバいな、とか考えていた中学時代の気持ちを久々に思い出しました。

その一方で途中から「あれもこれも」という何でも聴きの状態になり、感覚が鈍くなってくるというか、自分にとっての良さって何なんだ?という感覚に陥りました。なんというか「なるほどなー」っていう感じで再生してしまって、感想はレビューや解説サイトに求めるみたいな。それも楽しみ方のひとつなんですが、「なるほどなー」って聴き流してしまう感覚はやっぱり気持ち悪かったので、夏ぐらいから毎月Apple Musicのプレイリストにまとめて、後から振り返って聴けるようにしました。これが結構よかった。話題のものも気になるけど、本当に好きなものを見つけたいという話。

‎takafmの「2018年」をApple Musicで

以下はその中でも、特に印象に残った2018年の(ごく個人的な)音楽体験の記録です。

mei ehara

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声とメロディ、キセルによる楽曲のアレンジが素晴らしくて、アルバム「Sway」は年中聴いていました。yumboが2018年の1月に渋谷WWWでライブをすると聞いて予約をして、その対バンということで知ったのがきっかけです。最初YouTubeで聴いたときは、大貫妙子みたいな含みのある声だなと思いました。

さらにその予約の後、「歌っこ広場やまびこ」という地元仙台で開催されるイベントにも出演すると知り、何の因果か自分もBGM係としてイベントをお手伝いすることに。今になって振り返ってみるとめちゃくちゃ恐縮な話です。渋谷のデカい空間でスピーカーを介して聴いていたのが、目の前で鳴っているのは割と変な感覚でした。BGM卓が前にあったので、お客さんの目障りにならないようにしゃがんでいたら本番中に足をつった。打ち上げとカラオケ含め思い出深いです。

meiさんは文藝誌も主催しています。2冊とも読みました。多摩だるま、中銀カプセルタワー、声と想像、が特に良かったです。メディアテークでも買えます。

Winona Forever

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カナダのインディーバンドです。管楽器が入ったバンドが最近好みで、Bandcampを漁っているときに発見。ヘロヘロな感じと、ズレた感覚が気持ちいい。繰り返しの構成を感じさせないままあっという間にアウトロに雪崩れる感じとか、結構考えられてる気がします。Name Your PriceなのでDLしましょう。

ネットに情報も少なく話題になってないけれど、たまに新曲をYouTubeやBandcampにあげてくるので定期的にチェックしていました。バンド名はジョニーデップがウィノナライダーと結婚したときに彫ったタトゥーが由来だそうです。Mac DemarcoとかPeach Pitとか、カナダって脱力系のイメージがあるのは気候のせいなんでしょうか(ニールヤングとかザ・バンドもカナダだけど)。飛行機苦手だけど行ってみたい。

アルバム出して欲しいです。

坂本龍一

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年頭にどハマりしていました。2017年に出たAsyncを聴いて、NYでのライブの様子を収めた映画を観て、Async制作ドキュメンタリー映画を観て、設置音楽展を観に行きました。特にドキュメンタリーは面白くて、ガンを克服しながら音を求めて南極にフィールドレコーディングしに行ってニコニコしたかと思えば、「なりたくて音楽家になったわけじゃない」と言ってしまうあたりが人間味に溢れていて感銘を受けました。

commmons: scholaというシリーズを発行したり、若い音楽家にもちゃんと目を向けているあたり、もう66歳なのに精力的で圧巻です。今年の2月にリリースされたAsync - RemodelsではOneohtrix Point NeverやYves Tumor、Arcaなどが参加しています。「OPNは意外とピアノが上手い」と坂本龍一が言っていた、という話を、9月のOPNと若林恵さんのトークイベントで聞きました。

君の名前で僕を呼んで」でも音楽が使われていました。

Tatsuya Takahashi

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ちょっと脱線して、元KORGでアナログシンセの開発に従事していた技術者の高橋達也さんです。入社面接で自作のシンセを持ち込んだという生粋のシンセ好きの彼が、歴代の名機を解説している動画シリーズ「First Patch」が面白く、よく観ていました。

シンセに興味が出たのは、6月のイベントで一緒にやったつるた君が、練習の度に新しいシンセを持ってきたからです。

そういえばMoogの新プロダクト紹介用ビデオが公式とは思えない程サイケで笑えるのですが、その中に坂本龍一が出てきます。「シンセ第一人者の冨田勲さんが『電気の音といっても、雷と同じで自然と同じなんだよ』と仰っていた」という話が好きです。

Tom Misch

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友達の西川君に教えてもらいました。SRVっぽいブラウンのピックガードのストラトだし、トーンとかフレーズも歌い方も、なんかJohn Mayerっぽいなーと思っていたら、やっぱり影響を受けているみたいです。

John MayerTRY!というアルバムは高校の頃に一番聴いたであろうアルバムなので、色々思い出します。彼はSRVとかバリバリのテキサスブルースから影響を受けていて、それでいて歌が立っているので好きでした。3ピースで演奏しているこのアルバムが一番好きです。

John Mayerがバークリー時代に指導を受けていた、日本人のトモ藤田の動画をいくつか見返したりしました。こういうインプロ、ぼーっとずっと観てられる。

網守将平とバクテリアコレクティブ

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4月にあった六本木SuperDeluxeでのイベントでたまたま観ました。それまで網守将平という名前すら知らなくて、ライブ中もノイズ(オウテカのカバーやってた)からピアノ曲まで間髪入れず目まぐるしかったのですが、終わったときに「やばいものを観たかも…」という感覚になりすぐにApple Musicで検索しました。

wiki?はここに詳しいと思います。東京藝大出身の作曲家で、ライブはあまりしてない様子。運がよかった。

で、後でceroの新曲MVが出たときに「どこかで観たことあるなー」と思ったら、このときのバックバンドでした。パーカッションは夏に新譜をリリースした角銅真美さん、ギターは新譜をリリースした古川麦さん、ベースはGUIROの厚海義朗さんという布陣。ここからまた興味が広がったこともあり、大事なイベントになりました。

Orangeade(あるいは 北園みなみ)

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上と同じイベントで、当初目的だったのがOrangeadeです。ネット上の存在で、顔出しが一切なかった謎の作曲家「北園みなみ」が新しくバンドを結成した、しかもライブをやる。ということで、その姿を目撃したいという人が多かったのではと思います。自分もそうでした。

北園みなみは仙人みたいな出で立ちで、完コピしたというジャコパスばりのフレーズを繰り出していました。それと同じくらいMCでも飛ばしていて、落語家みたいでした。

ブログを一度見たことあるのですが、現実とナンセンスが交錯していて浮世離れしています。「エビはカニじゃない」をライブで聴けてよかった。

Lamp

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ボサノバなどブラジル音楽から多大な影響を受けた日本のバンドです。キリンジなどと比較されることが多い気がしますが、個人的にはより難解な印象があります。

「さち子」という曲がすごく好きで、このMVを初めて見たとき、これ以上のポップスはないんじゃないか、という衝撃を受けました。今でのその気持ちは変わらないです。

今年リリースされたアルバムは、難解さよりもそのポップネスが前面に押し出された印象で、今までで一番好きな作品です。リリースツアーの東京編はキネマ倶楽部という、元キャバレーのホールで開催されました。このライブを観に行った時、耳の調子がすごく悪くて(後で病院に行って治した)、ライブ中はそれを忘れられたのですが、終わったらすぐに現実に引き戻されるという、なんとも言えない記憶が残っています。それくらい、演奏が素晴らしかったです。

Andy Shauf

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カナダのシンガーソングライター。どこから知ったのかは忘れたけれど、2016年発表のアルバムを昨年末から今年もずっと聴いていました。

派手さは全くなくてスッと入ってくる曲が多いです。聴く人や状況によっては地味な印象を受けるかもしれません。でもラッパがバーンとなる曲もあれば、明るい曲だと思っていたら急に不穏なストリングスが入ってくる曲もある。すごくカラフルな曲を書く人だと思っています。

今年はFoxwarrenという、彼が幼馴染と昔からやっているバンドの音源もリリースされました。好きです。

王舟 x BIOMAN

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今年の6月、部活の2人にお誘いいただいて「歌っこ広場やまびこ」に出演できたのは大きかった。そこでの対バンが王舟でした。自分達の演奏が終わってグダーとしてるときに、1曲目にこのBIOMANとの共作の「Pergola」をやっていたのが印象的です。でかい窓の前で王舟は椅子に座って、自分の家みたいにギターを弾いていた。

BIOMANはneco眠るというバンドでシンセと作曲をやっていた方です。今年は「千紗子と純太」というユニットのリリースもしていました。王舟との共作はイタリアでのレコーディングで、架空のサントラ制作という体。ここを読むと色々大変だったことがわかります。

打ち上げではミシュラン掲載のめちゃ美味しい居酒屋に行きました。あわよくばその辺りの話を聞きたかったのだけど、そんな話には全然ならず、自分の生真面目さについて考えさせられた…。来年はRojiにも七針にも行きたいなと思います。

yumbo

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今年、東京で2回yumboのライブを観に行きました。1回は1月に@渋谷WWWにて。あんなに広いところでyumboの演奏を観るのは初めてだったのですが、赤いカーテンの荘厳な雰囲気と合間って、あと自分の状態もあったと思うのですが、これまでで一番感動しました。特に「来たれ、死よ」で何度も鳴らされるシンバルには鳥肌が立ちました。2回目は7月に@小岩bushbashにて。フロアが鮨詰め状態で、前で見るのは早々に諦め、一番後ろに陣取っていた記憶があります。

衝突トリロジーという3曲、中でも「蛇からの手紙」がとても好きです。音源を手に入れたので、よく聴いていました。20周年ということですが、コンスタントに活動が続き、良い曲が生まれているのは本当に凄いです。

1月の渋谷のライブでmei eharaさんが製本して持ち歩いていると言っていた、yumboのこと。読むと20周年以上の重みを感じます。自分なんかの言葉じゃ足りないです。

Lang Lee

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韓国人の女性アーティスト、イ・ランです。3月に仙台で行われたyumboと共演&トークイベントに友人何人かが観に行っていて、感想を聞くにつれ気になる存在になっていきました。

「ヘル朝鮮」とか「死にたい」という断片的な発言を友人の口から聞いて、怖い人なのかも…みたいな偏見を抱いてしまって良くないな、と思ったのでエッセイを買いました。「神様ごっこ」というCD付きのやつです。読んで、繊細で人を笑わせることに熱心な人なんだ、と安心しました。

その後、Sweet Dreams Pressの11周年イベントでライブを観る機会がありました。簗田寺(りょうでんじ)という町田のお寺が会場です。そこで民族衣装で演奏するイ・ランは、アウェーの地の戦士といった趣がありつつ、でも戦ってるというより打ち解けた後の宴みたいな和やかな雰囲気で演奏が進むのがとてもよかったです。柴田聡子との演奏もよかった。来年リリースされるよう。

この簗田寺でのイベントは他にも、王舟やGofishトリオ、井手健介や風の又サニー、mmmや池間由布子、タラ・ジェーン・オニールやテニスコーツなどが出演し、見応えがありました。

Jerry Paper

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LAのシンガーソングライター。詳しいことは知らないまま、YouTubeのおすすめアルゴリズムで出てきて観たらハマりました。なんでワンピース着てるのかとか、楽器隊がやたらセクシーだなとか、サックスの加減が最高だな、とかいろいろ見どころ聞きどころがあります。MVも観たらなかなか変態的でした。

宅録から始まってるようですが、最近は専らバンドでの活動みたいです。今年リリースの新作を2018ベストに選択している人もちらほら見かけます。個人的には録音よりもパフォーマンス含めたライブ演奏が良くて、過去の動画も遡って観ていました。

と、調べていたらインタビュー記事を見つけました。ワンピースについての言及が無い。

折坂悠太

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漢字4文字の男性アーティストが最近多くて暫くスルーしていたのですが、通勤中に何気なく聴いた1曲目「坂道」のポップさにやられてしまいました。うお、と思いながら続く2曲目の「逢引」を聴いていると途中、急に語りが入り演劇のようになる。前線異常なし!って軍歌かよ〜って思ったりしながら引き込まれていきました。

ティム・バックリィと評されたことがあるとか無いとか。声の使い分けが凄いです。ホーミーみたいな声を出したり、向井秀徳をコピっていたことの名残なのか、あえて歪ませてるんだろうシャウトを出したり。

12月に渋谷WWWでのバンド演奏を、それから江ノ島でのソロのライブを観に行きました。時折ギターも持たず歌に専念、ステージ上を横断する姿を見るに、演劇を見ている気持ちになりました。パフォーマーです。過去に演劇の脚本を書いていたらしく、それが影響しているのかもしれません。寺尾紗穂さんの本「音楽のまわり」に寄稿されていた文章に、演劇についての話があり、面白かったです。

Hi, how are you?

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1月の「歌っこ広場やまびこ」で初めて原田くんを観て、強烈な印象なままカラオケに雪崩て、サザンを歌いまくるという強烈な思い出が残っています。自分はカラオケそのものが苦手なので、カラオケ行くのとかマジで3年振りとかだったのですが、この日はなんか楽しかった。

で、なぜか9月には深夜にねずみのボードゲームで遊びました。このボードゲーム奥深いのでみんなやりましょう。

来年はハイハワ2人の演奏も観に行きたいです。

Natalie Prass

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Okada TakuroがこれはAORだ!と推していたので聴いたら好みだった、アメリカのシンガーソングライター。個人的にAORって言葉はシティポップが騒がれる以前から馴染みがあって、何となく大人な、どっかのカーステレオから流れている、流行りではない過去の音楽というイメージでした。エアサプライとかデヴィッドフォスターとかアランパーソンズとかあの辺のイメージ。

もしかして自分のイメージと違う?となったりでその定義はよくわからないですが、好きなので最近騒がれるようになって嬉しいです。

マシュー・E・ホワイトというおっちゃんが主催のSpacebombレコード、これからもチェックしていきたい。この動画でも弾いているギターのAlan Parkerという人のプレイが好きです。Andy Jenkinsのアルバムでも弾いているようです。

どうでもいいけど新譜はジャケットがめっちゃ青い。折坂悠太のアルバムはめっちゃ赤かったので対照的。Snail Mailのアルバムは赤と青。無地にセルフポートレートのジャケットが最近流行っているんでしょうか。

以上です。

こうやってまとめること、初めは懐疑的だったのですが良いですね。大変だけど頭の中が整理された気がします。上にも書きましたが「歌っこ広場やまびこ」に出演できたのは気持ちの面で大きかった。部活のおふたり本当にありがとうございます。

今年はぼちぼちだった活動も、来年はちゃんとやって行きたいです。今年出す予定の音源があったのですが、諸々あって停滞中です。そのデモトラックをここに置いてみます。頑張るぞー。